今回も神経を残す治療について投稿いたします。
当院には歯の他院様で「虫歯が大きいから歯の神経を取らないといけない」
と言われた方がセカンドピニオンを求めてご来院されることがあります。
当院でご提供できる治療方法の中に生活歯髄温存療法(Vital Pulp Therapy)というものがあります。
この治療は深い虫歯によって神経間際まで虫歯進行しているものの、神経がまだ健全、または軽度の炎症が起きている状態であれば温存を試みるというものです。
この処置に意義があるのか、という点から私の考えを記載させて頂きます。
神経を取る(抜髄)と内部をくり抜かざるを得ないので、歯の物理的な強度が下がり折れやすくなります。
歯根破折といって、骨に埋まっている根の部分が折れてしまうと抜歯せざるを得ないことがあります。
このような事態を長期的に避けることができるのであれば、歯の寿命を伸ばすことにつながると考えています。
このことから当院ではそもそも抜髄を避けることを目的に可能な方には一つの選択肢としてこの生活歯髄温存療法をご提案しています。
特に身体の治癒力の助けも必要な歯周組織再生療法や、生活歯髄温存療法などは定期的なフォローを行い、再発などの問題が生じていないか術者としても気になるものです。
今年も残り少なくなってまいりましたので少しだけ早いのですが今年度、当院でどのくらいの処置を行ったのか2023年11月時点での集計をしていますが本年度の横浜駅きた西口歯科における生活歯髄温存療法の実施数は26症例でした。
この症例数をどう捉えるかですが、あくまで私個人の評価としては「多い」と思っています。
もっと早く治療できていたらここまでの処置が必要なかったのに・・・
という思いがあるからです。
治療経過につきましては残念ながら1名の方がキャンセルが続き中断してしまったためフォローアップできておりません。また年内の処置なので処置後の経過は日が浅く、あまり参考にできませんが残り全ての方が処置後の痛みが原因で神経を取ることもなく経過しています。
昨年の2022年に処置を行なった方で本年12月までに神経を取らなくなってしまった方はいらっしゃいません。
時々少ししみるという方がいらっしゃいますが、時間と共に消失または食事に支障がないレベルに緩和していくことが多いです。
比較的良好な結果かもしれませんが、最大の要因は私の技術力ではなく、当院の診断基準が厳しめだからだと考えています。
成功しやすいとされる状態でなければチャレンジングなご提案はせず、患者様とご相談の上で抜髄を行っています。
ほとんどがあまり神経を損なうことなく処置を行いますが、中には壊死していると思われる部分をできるだけ除去し、健全と思われる部分のみを残す断髄という処置を行うこともあります。
壊死している箇所と健全な部分の明確な線引きがないため処置時の判断が難しいこと、術後経過観察時に神経の状態を把握しにくくなることが欠点だと考えています。
断髄は当院ではあまり行わない処置ではありますが、患者さんと事前にご相談の上で施術する場合もあります。
参考の画像をご提示させていただきます。
他院様で処置後お痛みが出てしまい、この状態であれば神経を取らないといけないと言われセカンドオピニオンにいらした患者様です。
確かにやや厳しい状態であることが予測されましたが、ご本人の強い希望もあり、断髄処置を行うこととなりました。
マイクロスコープを用いて内部を確認しながら処置を進めますと予測通り神経の大半が壊死しておりましたが、根元に近づくにつれ健全である兆候が認められましたので歯頚部断髄という方法も用いて抜髄を避けて温存する処理を行いました。
処置後は2、3日のお痛みがありましたが現在は問題なく経過しております。
参考までに歯の神経を残す処置につきまして治療費について記載致します。
生活歯髄温存療法77,000円(税込)
上記以外に虫歯で穴が空いた歯は最終的に歯の詰め物、被せ物を装着し機能を取り戻す必要があります。
生活歯髄温存療法を自由診療で行なった場合、最終的な装着物も自由診療で施術致します。
以下これらの参考費用も記載致します。
小さい穴の場合 ダイレクトボンディング(自費CR 55,000円(税込))
セラミックインレー 77,000円(税込)
セラミックアンレー、セラミッククラウン 132,000円(税込)
※上記治療費は2023年12月時点のものとなります。
今後治療費が変更になることもあります。予めご了承ください。
今回は当院における生活歯髄温存療法の2023年度の実績について症例も交えて投稿いたしました。
歯科医師として歯の悩みを解決するためにお力になれるのは嬉しく思うのですが、より多くの方にここまで虫歯や症状が進行する前にお目にかかれたらと思っております。
再生医療が発達してきておりますが、一般開業医レベルではまだ神経を再生させるには至りません。
生活歯髄温存療法にもデメリットも存在しますが(別の投稿で改めて記載させていただきます)、抜髄を提案されて悩んでいる方は生活歯髄温存療法が適応できるか確認してみても良いかもしれません。